迷惑[めいわく]の意味とは?【くらしの仏教語豆事典】
迷惑[めいわく]…この悲しみをどうすりゃいいの
「ご迷惑を、おかけいたします」「迷惑千万だ」から
「近所迷惑」「迷惑駐車」まで、迷惑は、いやな目にあって、
困ることを意味するに日常語としてよく使われています。
迷惑は、サンスクリット語「プラーンティ」の意訳で、
心の迷妄、あちらこちらに動くこと、よろめくことなどの意味です。
そこから、道理に迷い、
とまどうことで、どうしてよいか分からないで、
途方にくれることをいいました。
この迷惑は、仏典にも出てくる言葉で、
『華厳経(けごんきょう)』【※】や
『法華経(ほけきょう)』【※】にも登場します。
親鸞聖人(しんらんしょうにん)【※】は、
仏の慈悲に包まれ、
仏の力に生かされながら、
なおも愛欲の絆(きずな)にしばられ、
名利を求めてさまよう自分に対する深刻な内観から、
「悲しきかな、愚禿鸞(ぐとくらん)、
愛欲の広海(こうかい)に沈没(ちんもつ)し、
名利(みょうり)の太山(たいせん)に迷惑して…」
と 『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』【※】に記しておられますが、
その「迷惑」が、
まさしく、この意味なのです。
【※華厳経(けごんきょう)】
詳しくは『大方広仏華厳経』といい、大乗経典の一つ。
漢訳には八十巻本・六十巻本・四十巻本の三種があり、華厳宗の根本聖典。
釈迦が成道の直後に自ら悟った内容をそのまま示し、その悟りにいたる段階を説き、
精神の深まりを説く経典で、全世界を毘盧舎那仏(びるしゃなぶつ)の 顕現であるとする。
【※法華経(ほけきょう)】
『妙法蓮華経』八巻といい大乗経典の一つ。
すべてのものが仏になると説き、ブッダの永遠の生命を直截に説き明かす。
一種の宗教文学作品といわれ、「諸経の王」として広く流布した。
天台宗、日蓮宗の所依の経典。
【※親鸞聖人(しんらんしょうにん)】 (1173-1263)
浄土真宗の開祖。比叡山で学んだが満足せず、
六角堂に百日参籠ののち法然聖人の門下に入る。
1207年、念仏停止によって越後の国府に流罪。
のち関東をめぐり他力本願の教えをひろめた。主著は『教行信証』。
【※教行信証(きょうぎょうしんしょう)】
詳しくは『顕浄土真実教行証文類(けんじょうどしんじつきょうぎょうしょうもんるい』といい、
親鸞聖人の主著。
1224年成立。教・行・信・証・真仏土(しんぶつど)・化身土(けしんど)の六巻から成り、
浄土真宗の教義体系が示されたもので、浄土真宗の立教開宗の根本聖典。